御宿の案内

 

<御宿の歴史など>

 御宿は昔から漁村として知られていたようですが、鎌倉時代の執権、北条時頼が出家して諸国行脚の折御宿の寺、最明寺(さいみょうじ)に投宿。「御宿(おやど)せしそのときよりと人問わば網代の海にゆうかげの松」と歌ったことから御宿の名が生まれたといわれています。時頼は世に最明寺殿と言われました。

 西暦1600年9月、当時のスペイン領フィリピンの総督であったドン・ロドリゴを 乗せた総勢373人乗組みの船が、フィリピンからメキシコへ帰る途中、御宿・田尻浜沖で台風に遭い座礁。373人の乗組員のうち317人を海女さんや漁民 が救助しました。村人が300人前後だった時代ですから大変な救出作業だったと想像できます。それ以来スペインとの交流が始まります。

生き残ったロドリゴたちは徳川二代将軍秀忠、そして駿府にいた家康にも遭い、翌年三浦安針設計の舟でメキシコへ帰りました。メキシコから返礼の使いが来日し、その舟で伊達藩の支倉常長らがメキシコ、さらにスペイン、ローマへと旅したことは歴史の教科書で有名です。

しかし、御宿のことは、徳川幕府による鎖国の所為か長く歴史に埋もれてしまいました。

おととし(2009年)、町では400周年を祝い、皇太子を招いての記念式典を初め様々な催しを実施。多くの人がこの事実を知ったことと思います。

 

週刊新潮の表紙の絵で有名だった画家の谷内六郎は一時期、最明寺に投宿して色々なスケッチを試みていました。同誌の創刊号は御宿が舞台です。

千葉県のみならず日本を代表する童謡「月の沙漠」を作詞した加藤正夫も御宿と縁の深い人で、最明寺に墓があります。

森鴎外の墓も御宿霊園にあります(分骨ですが)

結構御宿は文化的な歴史に恵まれていると言えるかも知れません。

<地勢・風土など>

 御宿の年間平均気温は摂氏16度前後。温暖です。面積24.92平方kmのうち、33%が山林、水田が11%などとなっていますが、狭いところに海あり、川あり、里山ありで今はやりの「生物多様性」が豊かです。国の天然記念物ミヤコタナゴを初め、源氏・平家ホタル、イノシシ、ウサギ、ハクビシンなどが生息しています。夏には御宿海岸に海亀が産卵します。この海岸は「月の沙漠」の舞台にもなったくらい、美しさに定評があり夏は海水浴とサーフィンの若者で賑わいます。

 東京から南東に約75km、大原と勝浦の間に位置し、外房線の特急で東京から約80分の距離です。そんな東京の奥座敷ともいえる場所に手付かずの自然が残っているのです。

 人口は約8000人(3500世帯)。御多分に漏れず高齢化が進んでいます。若者を如何に呼び戻すかが課題です。

 町は観光に力を入れていますが、その核になりそうなのが「スペイン船救難」の歴史的事実と「海女」、それに「温泉」です。温泉は町に2箇所源泉がありますが、いずれもコカコーラのように黒く、ヌルヌルです。温泉チャンピオンの郡司氏によると日本で2番目のヌルヌル度だそうです。ちなみに1番は熊野温泉(和歌山県)だそうです。住職は自称“観光大使”として東奔西走しています。

<グルメ・宿案内>

 太 平洋に面する御宿の自慢は何といっても新鮮な魚介です。が、北海道に似ていて、新鮮素材に頼るあまり料理に拘りがなく、うーんと唸るほどの物はありませ ん。例えば寿司でも酢飯に刺し身をただ載せるだけの店が殆どです。銀座の「青木」や数寄屋橋の「次郎」のようにきちんと“仕事”をする店はありません。そ のなかでお勧めといえばーーー

      寿司ならば「鶴乃寿司」(浜436、Tel.0470-68-2147)  ここは散らし寿司が評判です。魚介の種類も多くまるごと御宿を味わうの趣があります。

     魚介料理全般を味わいたければ、旅荘「大野荘」(新町775 Tel.0470-68-5511)「浜よし」(岩和田716 Tel.0470-68-3415)がお勧めです。御宿産の伊勢海老、アワビを食することができます。「浜よし」では昔ながらの漁師料理である冷汁丼も味わえます。

     「御宿・元湯」(浜152 Tel.0470-68-4126)は源泉二箇所のうちの一つを持っています。黒くてヌルヌルの温泉につかった後、魚介料理に舌鼓を打ちそのまま宿泊できます。ここのご主人はミヤコタナゴや動植物に造詣が深く、時間を忘れて自然談義に花が咲くこと請け合いです。

      ダイナミックに魚介類を堪能したい向きには「舟勝」(六軒町157-31 Tel.0470-68-5966)があります。太田和彦の「居酒屋(いざかや)味酒(みしゅ)(らん)」という本に房総でたった1軒紹介されました。酢ナメロウ、イカの沖漬けなどの本格的な漁師料理が味わえます。

・ 新鮮魚介といえばイタリアンも無視できません。御宿からちょっと距離(車で約30分)がありますが天津小湊に抜群のレストラン「ナチュール」(鴨川市小港649 Tel.0470-95-3060)があります。名前の通り、自然素材に拘っています。御主人の奥谷氏は魚市場の仲買人の資格を持っており、近くの漁港から珍しい、新鮮な魚を仕入れて腕を振るっています。ただ、休みが不定期なので要予約です。

     洋食系ではサヤンテラス(浜2163 Tel. 0470-68-7711) もお勧めです。一昨年の「400周年記念式典」の際、皇太子が宿泊されたホテルです。パスタもカレーもあります。標準以上のレベルをキープしています。

     お隣の勝浦では「勝浦タンタンメン」が大ブレーク。が、これといった旨い店はそうありません。以外なのは御宿のすぐわき、部原海岸にあるイタリアンの「ラグタイム(勝浦市部原1928-32 Tel.0470-73-8666 国道128号沿いの海岸)です。激辛ながらコクのあるスープのタンタンメンを供してくれます。なお、この海岸はいい波が出るためサーファーのメッカとなっています。

     目を転じて、御宿の里山地区にもお勧めのレストランがあります。蕎麦屋「幸七」(上布施1885-1 Tel.0470-68-5220) は千葉県でも5本の指に入る蕎麦屋です。古い農家をリフォームした店は郷愁を誘い都会人を癒してくれます。蕎麦も引き立て、打ちたて、茹でたての「三たて」を守り、丁寧に作っています。季節には周辺で収穫した「布施蕎麦」を賞味できます。

      幸七の近くにこれも古い農家を活用した農家レストラン愚為庵(ぐいあん)(上布施2194 Tel.0470-68-5927)があります。有機無農薬野菜を使った地産地消がモットー。大地農園の経営です。予約制で、都会からバスで来る人が多いのが特徴です。

     西武不動産が開発した別荘地区「西武グリーンタウン」(地名は御宿台)のなかにもレストランがあります。「だんらん」(御宿台106-12 Tel.0470-60-3886)は家庭料理を標榜する店ですが、味はとても素人ではありません。それもそのはず、ご主人の松谷氏は勝浦の「ホテル三日月」にいた方です。金目鯛の「漬け丼」や石焼ビビンバ、それに各種ピザが人気です。

      同じ御宿台にヌーベル・シノワとでもいうべきレストラン「さんしろう」(御宿台334-13 Tel.0470-68-5646)があります。御主人は東京・江戸川出身。本格的中華のほかに、ジャンバラヤやぺペロンチーノ風焼きそば、など新鮮なメニューに工夫を凝らしています。価格がリーズナブルなのが人気でもあります。

 

  御 宿には民宿は沢山ありますが、本格的な宿泊施設は少ないといえます。そのなかでお勧めなのは、ホテルならグルメ欄でも紹介した「サヤンテラス」。温泉宿な ら「御宿元湯」。料理旅館なら「浜よし」「大野荘」というところです。ちょっと足を伸ばして勝浦に宿泊すれば三大朝市の一つである勝浦朝市も見物できま す。その場合お勧めは、建物が勝浦市の文化財ともなっている「松乃家」(勝浦市勝浦30 Tel.0470-73-0047)です。もちろん魚介類をふんだんに使った料理も味わえます。

 

  御宿は海だけでなく里山もお勧めです。国の天然記念物ミヤコタナゴを初め、イノシシ、野兎、不如帰、鶯などなど。生物多様性に富んでいます。

 

<御宿市場>

 寺の檀家を初め周囲で無農薬・有機栽培の野菜が手に入ります。また、寺の周囲は粘土質の土壌の所為か、米(コシウヒカリ)がとても旨いと評判です。新潟・魚沼のコシヒカリ以上だという人もいます。夜陰に乗じてその某地方の農協のトラックが実谷の米を運び出しているのを目撃したという人もいる位です。

 勿論新鮮な魚介類も豊富です。まだ放射能汚染は確認されていません。

 これらの御宿の産物を御希望であれば、多少であれば実費(送料は別)で送れます。御検討ください。将来はネット上に「御宿市場」のようなものを作れたら良いと思っております。